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いわゆる性癖の話、不幸萌え編



 分かりやすさを重視してタイトルをこうしましたが、私は性的嗜好の意味で「性癖」をなるべく使いたくありません。性的嗜好という意味で伝わりはするのですが、「本来は誤用」という点がどうにも引っ掛かって気持ち悪いのです。「きんじが言葉を誤用しているよ、やっぱりバカだなこいつ」と誰かに笑われてしまうような気もしてしまいます。まあそんなクソみてえなこだわりと自意識過剰より分かりやすさの方が大事なので、このシリーズのページでは性癖と書く事にします。

 まず私の創作のベースとして真っ先に挙げられるのが「不幸萌え」でしょう。たぶん。不幸な子が可愛い、不幸なシチュで気持ちよくなる、というやつ。「不憫萌え」とも言いますね。作風の話のとこで書いた「暗い話ばかり描いてしまう原因のひとつである趣味嗜好の話」をここには書こうと思います。前半がツイッターで見た話と言い訳、後半がなんで好きなのかとかそういう話です。後半の方がメインなので前半は飛ばしてくれてもいいです。
 この不幸萌えというジャンル、結構デリケートですよね。普通の感性なら…っていうとイタい異常者アピールみたいでアレですけど、普通は好きな子には幸せになってほしいものだと思うので。一般的には物語の苦難とかっていうのはハッピーエンドを盛り上げるための舞台装置ですし、それ自体を楽しむっていうのはちょっと特殊で、当然嫌がる人も多いよねって。この前ツイッターで何かが炎上しているのを見てたら(私は性格が暗いので明るい炎に惹かれてしまいます)、「不憫萌えは特殊性癖だから鍵アカウントでやれ」って書いてあってギョエーッ!ってなったと同時に、まあ極端な話エロ・グロ・NTR・不幸萌えぐらいで並ぶようなジャンルだよなあって思いました。ていうか世間的にはリョナの中の1ジャンルっぽいですもん。詳しくないので分かりませんが。
 ので、私は結構注意書きしたり警告したりしてるんですが、なんか「これは辛い内容ですよ」は信用されるのに「これは大丈夫な内容ですよ」は信用してもらえない感じがしてます。暗いのを読みたくない人を騙し討ちしてもお互いデメリットしかないし、結末のネタバレ覚悟で正直に申告してるのに。心当たりがあるとすれば、私が「これは暗くないな」って思ってそう言っても、100人中70人ぐらい以上が「暗い漫画だな」と思えば結果的に私が嘘をついた事になるので、そういうのが起こってるのかなあ?とは…。もしそうだったらごめんなさい。ただ分かってほしいのは、私に騙し討ちの意図はありません。私が暗くないよと言ったら私の中では本当に暗くないんです。本当なんです信じてください。

 で、ここからが後半です(なんか不穏なことがたくさん書いてあるけど、書いてる本人は至って健康です、という前提のもとお読みください)。
 自分がなぜ不幸に萌えを感じるのかたまに考えたりもするんですが、ぶっちゃけよく分かりません。萌えというよりは痛みを感じて喜んでる自傷みたいな面はあるなと思います。割と誤解されやすいのですが、私は自分の可愛いキャラを谷底に突き落として喜んでいるのではなく、「可哀想だなあ、幸せになってほしいなあ、ごめんね、ごめんね」と思いながら谷底めがけて背中を蹴っています。感情移入と同情と悲しみ故に泣きながら描くこともしばしばです。なんか文章として目に見える形にするとものすごく倒錯してるような感じになっちゃいますが、本当にそんな感じです。もしかしたら作風の話で書いた「でかい感情が好き」は後付けで、痛みをより強くしようとした結果そうなったのかもしれないですね。創作は身体に傷痕も後遺症も残らない上に作品が残るので、自傷としては最高に健康的なツールですよ。精神的にも物理的にも手間はすごいかかるので、自傷が必要過ぎる時はできないケースが多いと思いますけど。そこはクソですね。
 ちなみにですが、私は他人の作品で胸糞や不幸を摂取する分には、どっちかっていうと不快感の方が上に来てマジで苦手だったりします。胸糞を楽しむための作品に「よし!胸糞を楽しむぞ!」という気持ちで臨めば普通に楽しめるのですが、ストーリーの中に組み込まれた救われない展開とかは本当にダメです。具合が悪くなります。「力業ご都合ハッピーエンド」と「ストーリーのノイズにしかならないエロやセクハラの描写」と同じぐらい苦手かもしれません。苦手だけどついつい惹かれて「やっぱキツい…」を繰り返してしまうあたり、「NTRは苦手な人ほど適性がある」みたいなのが起こってるんだろうなって思います。救われねえ。

 他人を見る感じ、多分私みたいに苦しむ事を楽しんでる方もいれば、「苦しんでるキャラを楽しむサディスト的な楽しみ方」とか、「例え創作の出来事だとしても自分だけじゃないと思える安心感」とか、楽しみ方も千差万別っぽいですね(後者は「[ 22 ] 誰かと分かち合いたいなんて微塵も思わないけど、同じ気持ちの人がいるのわかるのはうれしい きんじさんの作品は私にとってそんな感じです」というおコメントもいただいております)。まあ暗いのが好きな皆さんは何かしらの楽しみ方を見いだしておられるので、私の陰気な創作にもありがたいことに肯定的な声をたくさんいただきます。サーチライトになりたいなんて傲慢な気持ちはないけど、こんなリストカット大展示会みたいな創作の数々が、少しでも人様にプラスに働いたのなら良かったなと思います。まあハッピーエンドもよく描きますけどね。描くよ。



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