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漫画の好きな作業の話



 漫画を描くという行為は「映画を作るにあたって映画監督とか脚本家とか役者とか全部ひとりでやるようなもん」って言われるぐらい、一人で色々やらないといけないものです。絵がうまくて話を作るのもうまいってもはやバケモンやんけと思うのですが、この世にはバケモンがゴロゴロおられるので恐ろしいです。原作と作画で分業しているケースもありますが、例えば原作者がネームまで描く場合なら「アイデア力」と「アイデアを活かして面白い話の流れにする能力」と「良い台詞を書く能力」と「ページ配分やらコマ割りやらのネーム力」は全く別の能力が必要だと思いますし、仮に他人のネームに忠実に作画だけをするにしても「物を正確に描く力」と「正確さをあえて崩したり効果線を上手に使ったりする演出力」と「漫画的に見やすく読みやすい絵を描く能力」なんかはまた別の能力だと思います。やっぱりみんなバケモンです。怖すぎる。

 で、四つ質問を頂いたときに書いたんですけど、私は漫画のために大量の絵を描くのはあまり得意ではありません。とにかくめんどくさいです。もし「描きたくないところは描いてあげるよ」と親切な妖精さんに言われたら、大事なシーンの顔アップ以外の全部を頼んでしまい、あとで「タダとは言ってないが?」と多額の手間賃を請求されて死にます。
 逆に大事なシーンの顔アップを描くのは好きです。最近表情の描き方を褒めてもらう事が多くて嬉しいな〜って感じなんですが、整った顔をクッチャクチャに歪ませて鼻水垂らしながら泣いてる顔とか、女の子がやっちゃいけないようなブチギレ顔とか、眉間と口角に力を込めた苦々しい顔とか、なんかそういう極端な表情を描くと快楽絶頂からのテクノブレイクをしそうになります。口角と眉間と目の下のシワはなんぼあっても困りませんからね。まあ私の絵って記号的というか、デフォルメの効いた可愛い系の絵だと思うので(画力不足からの逃げでもありますが)、そういう歪みそうにない種類の顔が歪んでるギャップで喜んでるところもあるのだろうなあ、という感じがします。あと作風の話かどっかに書きましたがでかい感情とか心の動きとかが大好きなので、それを表現しようとして表情も好きになるのはまあ必然かもしれません。
 ちなみにですが、この顔歪ませフェチ(?)は「パラドクサ・コンプレクサー」の最後の方を描いた時に覚醒しました。ネタバレをなるべく避けて書きますが、二十歳にもなる大の大人が、顔をグシャグシャにして叫んだり泣いたりしてる顔を描いたとき「情けなすぎる…可愛い…」ってなって何かが歪んで今に至ります。あと聞かされてる側のあのドン引きしてる顔もお気に入り。その前から号泣して鼻水垂らしてる顔とかそこそこ描いてましたけどね。泣き顔は昔からやけに力を入れてましたね。泣き顔と笑顔はエモのもとになりやすいので力を入れたいポイントではあります。

 あと私はストーリーと作画でいうとストーリーの方が好きな方なんですが、ストーリーを考える事そのものよりも台詞を書く事に快感を覚えます。こんな自分語りを書いてるんだし、文章というか言葉をアウトプットする行為が好きなのかもしれないですね。「言葉は命だから実質射〇」とか下品な事を書こうと思ったけどやめておきましょうね。もし漫画を読んでて「これ作者気持ちよくなってそうだな」って思ったら多分それは当たってます。実質〇精してるので。創作は公開リストカットであり公開〇〇ニーです。風紀が乱れるなんてもんじゃないわ。作風も小説っぽいから言葉がいっぱい書ける小説を書いた方がいいのかもしれないけど、語彙力がアレだから小説はアレです。台詞だけ書きたいです。
作風の話かどこかにも書きましたが、普段他人の顔色ばかり気にして過激なことが言えないから、ツイッター感覚で過激な台詞を書いて気持ちよくなってるとこがあるかもしれません。恥ずかしいから素では言えない本音に調味料をドバドバかけてお出しする、「死にたい」系と「全員死ね」系の台詞を書くのが一番楽しいです。「菜緒ちゃんの命日」「海底の残光」なんか相当気持ちよく書いてた思い出。みんなも創作に恥ずかしい本音を混ぜて露出狂しような!

 それはそうと私の漫画の台詞っていうと、「……」「えっと…」「あー…」とかの、間のためだけにある台詞がやや多めだと思うんですが、これは台詞を書く際に私が脳内で台詞を音読しているのが原因だったりします。自分でいうのもなんですが、私は会話の際の処理が非常に重いクソスペックCPUを脳に積んでるので、言いたいことを言葉という形に整理できなくて「あっあっ…えと…」ってなる、うまく返しが思い付かず曖昧な笑いで会話を終わらせてしまう、相手の話を聞き取って意味を理解するのに必死で発言までに時間がかかる、その割に表面的な反応や的外れな反応ばかり、会話が三人以上になると発言のタイミングが分からなくて黙り込んでしまう、などなどの致命的な不具合を抱えています。書いてて死にたくなってきたぜ。そんな人間が自分が自然だと思う間で台詞を書いてるので、必然的にクソCPUが見てる世界の会話になり、「……」や「あー…」などのロード時間みたいな台詞が挟まりまくります。そこの雰囲気が評価されてるとこはあると思うので、怪我の功名ってやつでしょうか。リターンの割に怪我が大怪我過ぎますが。死にたくなるぜ。
 他に自覚してる癖として、「なんで…なんでそんな事」「私の、私のせいで」といった文頭の繰り返し、「そう…だよね」「イヤ、かな?」「そういう事…だと思う、けど」といった、台詞を言いにくそうに言うやつはよく使うなあって感じです。三点リーダーは伸びる感じ、句読点は跳ねる感じでなんとなく使い分けてます。「そういう事…だと思う…けど」みたいな三点リーダーの連続は結構好きでよく使いますが、「そういう事、だと思う、けど」みたいな句読点の連続は使える場面が限られててあんまり使わないです。加えて「そういう事…」「だよね?」みたいな、吹き出しをみじん切りにするのもまた違う感覚ですね。本当に完全に感覚の話だから共感されるのかされないのか全くわからないですけど。
 あとあと、「幼(イタ)い」とか「殺(あい)してほしい」とか「裏切り者(じぶんのからだ)」とかルビで遊ぶのも好きです。台詞に詰め込める情報量というか感情の量が増えるので気持ちよさも増えるし、なんかうまいこと言った感が出るのも気持ちいいです。そのうち気持ちよさを求めてハードラックとダンスっちゃうヤンキーの漫画とか、心底非実在ェ(マジアリエネェ)忍者の漫画とか描いちゃうかも。いや描かないと思うけど。描けないけど。絶望(ぴえん)。

 もし上に書いた以外に頻出してる台詞の癖を知ってたら教えてほしいです。「癖出てる出てるwww」って自分の漫画を見て笑いたいので。



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